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COLUMN

2025.11.14

「ネシ子が会う」悠斗(第十六回)(2018/2/16 公開)

お久しぶりです。フレネシです。

インスタグラムで「数字」か何かのハッシュタグを検索していたところ、偶然出会ったのがこちらの投稿画像。

中心に大きく描かれたエメラルドグリーンの「2」の字体のかっこよさ。そして、その周りに散りばめられた他の数字の色味と隅の方のマークやひらがなが何ともいえずカワイイ…。

どんな人がどういった意図で描いたものか気になり、早速アカウントをフォローして他の投稿画像をのぞいてみると…

細く撚った粘土で形作られた数字。どこか懐かしさを感じるような、それでいて初めて出会うような、魅力あふれる字体。

こうした「数字」モチーフのアート作品が多数投稿されている、haruchan123456artさんのアカウント。プロフィールには、「自閉症の息子 はると(2000年生まれ)の作品を紹介します」とあります。

悠斗(はると)くんは新潟県上越市に住む、18歳になったばかりの少年。物心付いた頃から数字が好きで、クレヨンで描くようになると、紙からはみ出し、床でも天井でも壁でも、どこであろうと構わず描いてしまうほど、のめり込んでいったのだとか。

そんな悠斗くんのお母さんに、悠斗くんに関する10の質問に答えていただきました。

● 悠斗くんのお母さんに10の質問 ● 

フレネシ(以下フ):こんにちは、フレネシです。では早速ですが、悠斗くんのお母さんに10の質問に答えていただきます。

悠斗くんのお母さん(以下母):よろしくお願いします!

―――フ:【質問その1】悠斗くんはいつから絵を描くようになったのですか?

母:実はハッキリは覚えていませんが、年中くらいからだと思います。

悠斗が小さい頃は東京の江東区に住んでいて、年子の兄の3才児健診のとき、一緒に連れて行った悠斗の様子を心理士の先生が見て療育を薦められ、2才前からこども発達センターに通い始めました。そこで粘土や絵の具を使った活動を多く体験しました。

その頃は、何をするのも嫌がって泣いてばかりでした。絵を描くのも自分でクレヨンや筆を持って描くのを嫌がって、最初は一緒に持って描いていましたが、だんだん自分で描くようになりました。

年長のときに、主人の実家がある上越市にUターンして一年間保育園に通い、描く機会が増えたと思います。そのせいか、年長からたくさん作品をとってあります。

―――フ:【質問その2】最初に描いたのはどんな作品ですか?

母:最初は グルグルと丸を描いていたと思いますが、年長のときはもう数字やアルファベットやひらがな表を描いていました。

こちらの2の下の絵は 『お母さん』です。保育園の頃、同じ色あいでよく描いてくれました。

―――フ:【質問その3】一番好きな数字は何ですか?

母:本人に聞いたら「1 2 3 4 5 6…」と言われました。1~6までがセットになっているようです。1~12も、ひとつの区切りになっています。

作品で「2」をデフォルメしてるものが多いので、私は2が特別な感じはします。


D ↑「2、100こ できました…200点…はなまる…」と言って 描き上げたという作品。『はなまる』と『200点』が隠れているのだとか。

―――フ:【質問その4】カラフルに彩られた文字や数字がステキですが、色にはどういった意味があるんでしょうか。

母:悠斗の描く数字は 色が決まっています。

幼少期からお兄ちゃんが見ていたピングーのビデオジャケットの色と数字の組み合わせです。

1はブルー、2はグリーン、3はピンク、4はオレンジ、5はパープル、6はイエロー。グリーンの布団に、いつの間にかマジックで2と書いていたり、空を見ても数字を書くそぶりをしたり、常に色と数字を組み合わせて世界を見ていたんじゃないかと思います。


母:時々違う色を使うこともあり「冒険したね~」と思ってしまいます。

実はピングーのビデオは7と8も後から出てうちにもあるのですが「ピングーは6まで!」と言うので「6までだね」と返事を返します。(そう言ってほしい) 自分の中では6までと決まっているからいやなんだと思います。


病院の先生に「忘れられない障がい」だと言われたことがありますが、幼少期の記憶が今も生活に色濃く影響していると思うことがあります。

―――フ:【質問その5】悠斗くんが数字にハマったきっかけは何ですか?

母:しまじろうの本を1~12まで壁沿いに並べたりピングーのビデオケースを並べたりと、なんでも並べる時期があり、そんなことが数字との出会いだったと思います。数字のパズルでもよく遊んでいました。外に出ると、停まっている車のナンバーを私の手を持ち指差しさせて読んで欲しがりました。

―――フ:【質問その6】数字や文字以外のモチーフもユーモラスでかわいらしい悠斗くんの作品。ご本人が一番気に入っているキャラクターは?

母:アンパンマンはずーっと好きで、いつもセリフをブツブツ言っています。キャラの名前もたくさん知ってます。後は昔Eテレでやっていた「むしまるQ」です。YouTubeでよく観ています。セサミストリートも 大好きです。

↑セサミストリート。

フ:インスタにUPしていた、他のキャラクターもかわいかったです。よく特徴をとらえながらも、悠斗くんの世界観に落とし込まれていて、どれもものすごいインパクトがあると思います。

↑ミニオン。

↑キティちゃん。

フ:キャラクターのチョイスが多様なのも楽しいですね。


↑「まるちゃん」(?)という、悠斗くんのオリジナルキャラ。

フ:こちらは数字と同じ色のラインナップなので、数字を擬人化したキャラクターなのでしょうか。めちゃくちゃカワイイ!目がちょうどボタンのホールのようで、「ボタンのくに」という絵本を思い出しました。

―――フ:【質問その7】お母さんが一番驚いた作品は?

母:インスタで1/5に投稿した、上越警察署に展示した「うどんとアイスとお茶とイスと水道」の絵です。「ベルナールビュッフェみたい!」でびっくりしました。絵らしい絵は少ないなかで、すごいの描いたと思いました。

フ:この作品、私もすごいなと思いました。

お母さんのコメントのレスに「モチーフが面白いんですよー 右から アイス、お茶、椅子、うどん… そして しばらく飾ってたら ハッとして 左端に 水道を描きたしました」とあって知ったのですが、モチーフが身近な食べ物や家具ということに驚きました。

こんなに洗練されたうどんの絵を、私は未だ見たことがなかった気がします。そして、うどんやアイスに比べて、椅子がずいぶん小さいのも面白いですよね。

―――フ:【質問その8】線に迷いを感じない悠斗くんの作品ですが、これらの作品は、どんなスピード感で描いているんでしょうか。

母:作品によって様々ですが数字の作品は20分位だと思います。ササッと描いてしまうこともあれば、「クレヨン玉」を作ってから 時間をかけて描くこともあります。

フ:「クレヨン玉」って何ですか?

母:最初に別の紙にクレヨンを強い力で塗ると、クレヨンの先に紙に載らなかったクレヨンかすが残りますが、それを指先でまとめ、なめらかな球体にしてから描くときがあります。

フ:か…かわいい。乗り切らなかったクレヨンをまとめようという発想自体、私にはなかったですが、クレヨンも丸めてこんな風に並べると、ポップなアート作品になりますね。

―――フ:【質問その9】悠斗くん自身が納得していないなどの理由で、実は非公開になっている作品はありますか?お母さんがまだ見ていない作品とかも…。

母:落書き帳を見ると、途中で描くのをやめているものが結構あるので、それは納得いかずやめてしまったのかなぁと思います。

悠斗は自分の部屋で作品を描いているので、後から落書き帳を見返して「あら素敵!」な作品を見つけたときが最高に楽しいです。

完成してしまうと、あまりこだわらず棚にポイっと置いて終わりです。特に小さい頃は、でき上がるとビリビリに切って捨ててしまったりすることもあったので「あーとっておきたかった!」と思うこともあります。


フ:こちらのカタカナ集も、カクカクした字体と並びがユニークですね。悠斗くんのお部屋で見つけられたそうですね。息子にカタカナを教えるときに、悠斗くんフォントの絵本があったら楽しいだろうな・・と思いました。

―――フ:【質問その10】町家建築の旧今井染物屋で開催されたアールブリュット展in上越では、「天井や押入れの中まで数字で埋め尽くされた」実際の悠斗くんの部屋を再現して、数字作品を中心に展示されたそうですね。

↑アールブリュット展in上越にて。

↑アールブリュット展in上越の様子。悠斗くんの部屋を再現。

今後、展覧会に出展の予定はありますか?

母:ちょうど今日、担当の方が作品を 取りにきました。インスタで最初に投稿した、夏休み中に描いた数字の作品と、食べ物の粘土作品です。昨年も 出展させて頂いたイベントです。

アートキャンプNIIGATA 2018 



開催日: 2018年2月17日(土) ~ 19日(月) 開催 <入場無料>
開催時間: 10:00 ~ 18:00 (19日は16:00まで)
会場: 新潟市東区プラザ 1F エントランスホール / 新潟市東区下木戸1-4-1
主催: NPO法人 アートキャンプ新潟
協力: 社会福祉法人 みんなで生きる



フ:今週末ですね。新潟にお住まいの方も、そうでない方も、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。お答えいただき、ありがとうございました。

● インタビューを終えて ● 

カラフルな数字の原点は、ピングーのVHSのパッケージだったんですね。「忘れることができない」という自閉症の特性がもたらした、色と数字の切り離せない関係…。個展に足を運んで、その法則に気付いた人もいるかもしれないですね。

お母さんが「完成してしまうと、あまりこだわらず棚にポイっと置いて終わり」と言っていたように、悠斗くん自身にとっては描いている瞬間が作品の目的そのもので、ただ描かずにはいられないという衝動が彼を動かしているのだ…と感じました。


↑粘土で数字を作って並べる悠斗くん。並べ終わるとあっけなく丸めてきれいな球体にしてお片づけ…もったいない!

「作品は常に衝動と共にある」…というのは、実は私の考える芸術の理想でもありますが、そんな風にして生まれた彼の作品は見飽きることのない魅力に溢れています。

(文:フレネシ)